借景

春の今頃は、桜の季節だが、目を凝らすと、様々な顔がある。



それでも、今を短い盛りに咲く桜の花は、染み込むように、風景を占めて行く。


家の周りは、自然が身近に残っていて環境が良いせいだろうか、最近、古くなった団地の立替に伴い新しいマンションや住宅が盛んに開発されるようになった。しかし、海の向こうでは、低所得者向けの住宅ローンへの催促権が、債権として売り出され、巧妙にリスクを回避しているつもりが、結局は問題の先送りでしか無かった事が分かり、金融市場が随分混乱していると聞く。その影響や政治的な空白が続く事も重なり、わが国でも景気の先行きが見えず、住宅市場で需要が落ち込んでいると新聞に載っていた。

果たして道すがら、文字通り生木を裂くように、空にむなしく立っているあの松の木の無念は、朽ち落ちるに任せ、ただ風化して行くだけなのだろうか。


季節は移りゆく。

この時期の紫陽花が何となく好きだ。梅雨に備えて、次々と若芽を吹くさまは、どこか花を咲かすようでもあり、何よりも生きる力に満ちている。



若芽吹く、紫陽花の葉を、間借りして、
紅一点は、ソメイヨシノ

考葦子