師走の桜。


会社の社員食堂は1階に有るので、窓越しに工場の小さな庭園を眺める事ができる。その隅の比較的、日当たりの良い場所に桜の木が植わっている。先日の日記にも書いたがここのところの陽気のせいか、花を咲かしている。良くみると蕾が膨らみかけてきている物もあり、これからもちらほらと咲き始めるのであろうか。家の近所の桜は葉を落として、冬支度をしているが、ここの桜はまだ若いせいか、春と勘違いしているようだ。先週の初めには既に花を咲かしていたし、花びらもほとんど落ちていないので非常に日持ちが良いと思う。
花はきれいに咲くまでに、土に埋もれ、芽を出しても風雨に耐えて、ようやく華やかな姿を見せるので、見えない努力、忍耐を象徴すると誰かが言っていた事を思い出す。周りの木々が葉を赤く染め、冬支度をしている時にこの若い桜は花を咲かせ、寒さを我慢しながら凛としてその姿を正している。春の桜が眩暈を覚えるような淡い桃色で、移ろい、儚さを醸し出すのと違い、どこか向こう見ずではあるが、引き締まったその桃色は、何かに立ち向かうような軽く昂ぶった気色を表しているようで、どこか気品を感じる。

何がしか、今の自分と重ねて、どこか「共に頑張ろうよ」と声をかけたくなる。

しかし、紅葉を背景にした桜というのも、どこかシュールで「いとおかし」かな。


小春日も
襟を正すは
寒桜。