[仕事][つれづれ] 海図の無い航海。

8月、9月と 環境ISO(ISO14001) の社内監査員に当たっている関係で、社内や関係会社の環境監査を行う機会があった。私の職場は工場の中に色々な部署や関係会社が集まっている。自分の仕事と関係の無い部署に監査に行くと所変ればと言う感じ、全然違う仕事のやり方をしており結構面白い物だ。

ISO の監査なので、当然、書類主義的(ドキュメント中心主義的)な監査を行うことになる。元々成り行きで監査員に指名されたので、環境監査に必要な様々な知識なんて全然持ち合わせていない。最初は勤まるのかと思ったけど、SE チックな仕事をしている関係で、環境管理システム*1 の矛盾点を ISO 14001 の基準に則り、ドキュメントから洗い出していくなんて事は、SE なんかやっている私の方が実は結構早かったりする。特に ISO 14001 って具体的な環境保全に関する行動指針を与える物ではなく、各事業体ごとの事情に合わせて環境管理システムの構築による環境保全活動の運用と改善の進め方について規定した物だから、つまり具体的な活動の前のメタレベルでの基準なので、「このシステムを支援する情報システムとはどのような物か」のようなドメイン分析的な物の見方が結構役に立つわけだ。当然、環境側面の選定などの個々の項目に関する具体的な詰めなんかについては全然だったけど。

そんなこんなで内部監査を三回ほど行った。その中の一つに法規制の厳しいドメインで仕事をしている会社の監査があった。扱っている物が法律で厳しく規制されている物なので、当然それ方面の国の認定・資格を取り、外部からの業務監査を頻繁に受けている会社である。単なる業務内容のチェックだけではなく、体制や従業員の能力・教育・健康管理から内部監査の体制まで、文書によるマニュアル化とチェックリストによる記録がキチンと残っている訳だ。

元々私の所属する部署はあまりそういったものとは無縁の世界で「ドキュメント、書かずに済むなら、それで良し」という雰囲気であるし、あまり際立った環境側面もないのでISO 14001 の部署ごとの目標設定についてもかなり簡単な対応をしていた。内部監査委員の社内講習で、ISO 14001 による環境経営と環境保全型業務活動とか習ったが、なんか私の仕事の習慣からは今ひとつ現実感に乏しい世界の話であった。そういうわけで先の会社の監査では、講習会で習った模範的な内容が現実的に目の前に展開されていたわけで、ちょっと感動してしまった。まーその会社にしてみれば、そうしたプロセスを築かないと法規制に引っかかり、会社の存亡に関わる話なので当然と言えば当然である。監査に立ち会って頂いた担当者は書類管理が大変だとこぼしておられたが、今、現在、試行錯誤による(またの名を超放任主義による)研究・開発の仕事をやっている私には、PDCA のプロセスがマニュアルで明確になっているそうした仕事の進め方が少しうらやましい気がした。

地図と行き先、スケジュールまで綿密にびっしり決まった旅がしんどいか。地図も無い、道の見えない旅がしんどいか。それぞれ色々としんどい部分はあるのだろう。やはり隣の芝生は青いと言う事であろうか。

*1:この場合のシステムは文字通りの体制・仕組みとしての物であり、コンピュータのそれではない