クンダリニー・ヨーガの概説(無限と対峙するという事)

Hiroette さんの BLOG *1 をみてつれづれなるままに。

以前の記事にクンダリーニ・ヨーガの事を書いたが、断片的であるので、もう少し解説を加えてみたい。

クンダリニー・ヨーガとは簡単に言うなら超人的な力を得るためヨーガである。クンダリーニとはその超人的な力の事を意味するそうだ。クンダリニー・ヨーガではその人体にその力の源泉となる部位をチャクラと呼んでいる。その数は流派によって若干の違いが有るが大体基本は以下の7つあるといわれている。その名称と概要について以下に示す。

  1. ムーダーラ・チャクラ(性腺、腎臓、尾低骨から生殖器のあたり):体力をつける
  2. スヴァーディーシュターナ・チャクラ(副腎、腎臓のちょいと上ぐらい):根性をつける
  3. マニープーラ・チャクラ(胃・肝臓・太陽神経叢、へそのあたり):抵抗力をつける
  4. アナーハタ・チャクラ(心臓・肺・胸腺、胸の真中):五感を鋭くする
  5. ヴィシュッタ・チャクラ(甲状腺・唾液腺、首筋、喉仏ぐらい):第6感を鋭くする
  6. アージュナー・チャクラ(脳下垂体、眉間のあたり):頭脳を明晰にする
  7. ハスラーラ・チャクラ(松果腺・視床下部、頭のてっぺん):すべてを悟る。

どれも結構舌を噛みそうな名前であるが、クンダリーニ・ヨーガとはこれらのチャクラを呼吸法を土台にした瞑想によって覚醒させて行くヨーガである。極端に簡単に言うなら、呼吸法によって心身を整え、拡大の瞑想によってチャクラを正確に把握して、集中の瞑想でそのチャクラに意識や想念を集中して覚醒させて行くのである。チャクラが覚醒するごとに上記に記した能力が超人的に飛躍していくのである。簡単に言ってしまえばそれまでなのだが、実は色々と難しい。私自身、クンダリーニ・ヨーガについて修練しているわけでもないし、間違ってもチャクラなんてどれ一つ覚醒していない。ただ今までの瞑想での経験を通じて若干知識は身に付けているだけである。何が難しいか。

まず、上記の7つのチャクラは覚醒していく順序があるという事。上から順番が基本である、というかそれが一番無難である。極端な例、間違っても最後のサハスラーラ・チャクラから覚醒させようなんて事しようものなら、多分人生終わってしまう。廃人である。例えて言うなら、素手で極寒の北極にホッキョクグマと格闘しにいくような物である。多分に北斗の拳ケンシロウでもない限り勝ち目は無いだろう。大体7つのチャクラは大まかに3種類の分類できる。

  1. 超人的な体力をつけるためのチャクラ(ムーダーラ、スヴァーディーシュターナ、マニープーラ)
  2. 超人的な感覚を身に付けるチャクラ(アナーハタ、ヴィシュッタ)
  3. 超人的な智慧を身につけるためのチャクラ(アージュナー、サハスラーラ)

個人差はあるが基本は超人的な体力を1〜3のチャクラを十分に覚醒させてから、4,5で超人的な感覚を身に付け、6,7に行くことになると思う。前の記事でアナーハタチャクラの事について書いたけど、1〜3のチャクラを十分に開発しないままにアナーハタチャクラが覚醒させるために感覚を鋭くしていけばどうなるか。多分に存在の無限さに圧倒されてダウンしてしまうのが落ちである。人間の五感は外界から情報を得る上でかなりの部分を切り捨てている。視覚にしても、可視光の周波数領域なんてごく狭いものである。他の生物なら赤外の領域も見えるものもある。

昔、大学時代に視覚生理学の講義で物の輪郭を検知するためのマッハバンドの仕組みについて習ったことがある。眼が取り入れている可視光も眼球から脳へ信号を進めて行くに従い様々な加工が為される。例えば形を認知するだけでも本来の姿かたちにデフォルメを利かし、強調すべきところは強調して、そうでないところは無視して情報量を落としているのである。

聴覚についても同様である。人間が感じている世界は世界という存在のごく一部でしかない。また五感にしても人間は大抵の場合、その潜在的な能力の一部しか活用していない。アナーハタチャクラはこの五感の力を最大限活性化させるのである。

ただ人間の五感が情報を切り捨てて、普段は不活性なのも、単純に言えばそれだけの情報処理を行うためのエネルギーを得る事が出来ないためである。じっとしているだけでも結構エネルギーを食うのである。

例えばF15の戦闘機のパイロットを考えてみればよい。コックピットにじっと座って操舵かんを握るだけである。動くのは戦闘機という機械である。しかしマッハの速度で移動する事で、特に平衡感覚と体制感覚に強烈な負荷がかかる。だからパイロットは体力をつけて、猛烈な訓練を行うのである。

アナーハタ・チャクラについても同様で、超人的な体力をつけるムーダーラ・チャクラ等を覚醒しておかないと、拡大された感覚が入力してくる情報量に身が持たないのである。超人的な感覚もそれを制御するにはそれなり体力・精神力を必要とする。自転車のハンドルさばきとF1レーサーのハンドルさばきはやっている事は同じでも、高度さにおいては次元が違うのである。考えてみれば合理的に出来ていると思う。

後、チャクラの覚醒といっても何をもって覚醒したといえるのかという事である。よくある間違いに活性化と覚醒を混同しているケースが多い。チャクラといっても別に独立した実体があるわけではなく、要は覚醒することによって超人的な力を発揮する連合して活動する人間の器官の総称である。その働き度合い、強弱に於いても個人差はある。生まれつき、チャクラが人よりも活発に動いている人もある。*2 また運動や呼吸法、薬によって間接的にその部位の器官を活発にする事ができる。しかし活性化は活性化であって覚醒とは違う。チャクラにある様々な器官はその殆どが自律神経の支配化にあり、自律的に動いている不随意な機能である。覚醒とは随意機能にしてしまうという事である。活性化の場合は補助的な呼吸法や体操により、間接的にチャクラの働きを活発にする事であり、覚醒に比べると簡単な事であるが、自由意志による制御という観点からいうとやはり自由にはならない。例えば北斗の拳ケンシロウのように気を入れたら体の全身からオーラが発生して、回りの敵が一斉に飛んでいくいった事は覚醒しないとむりな話である。*3 瞑想において呼吸法が重要なのは呼吸は普段は自律的に動いている機能であると同時に、随意的にもある程度制御が可能な唯一の機構だからである。チャクラの活性化はチャクラを覚醒させる為の一つの過程であり、覚醒の方が活性化に比べる非常に難しい。*4

ここの所をちゃんと理解してから、クンダリーニ・ヨーガに取り掛からないとその奥義を極める事は出来ない。活性化だけでも、それはそれで健康増進という意味では良いことでは有るしそこで割り切ってしまうのも一つの見識であろう。しかし神秘的な体験を求めるあまり、結果を焦って薬物に手を出してとんでもない目に合う *5 場合もある。瞑想といっても色々と落とし穴があるのである。気をつけたいものである。

*1:http://blog.drecom.jp/hiroette/archive/910http://blog.drecom.jp/meisou/archive/47

*2:Hiroette さんの場合は元々アナーハタチャクラの部位が敏感なのかもしれない。

*3:覚醒しても、まず無理な事かもしれないけど。・・・

*4:どう難しいか、チャクラを一つも覚醒していない私には説明できない。

*5:例の何とか真理教みたいに