サボテンの気持ち。

知人に「園芸の鉄人」ともいうべき人がいる。その人から今日こんな話を聞いた。

植物でもストレスを感じたり、勇気付けられてしまう事があるらしい。特にサボテンは顕著だそうだ。例えば、台風などで鉢植えが倒れて壊れたりすると、幾ら新しい鉢植えに移し変えても、やはり花の咲き具合は通常に比べ落ちるらしい。怖い経験をしたのでびくついているそうだ。逆に開花の遅いサボテンに「そろそろ気合入れたらどうや」と叱咤激励すると翌日から気合を入れたように花を咲かせるようだし、まだ十分育っていないと思い「無理するなよ」と声を掛けつづけると本当に無理せず、花を咲かせないらしい。

また、とある鉢植えの木(名前はうる覚えである。失礼)について、こんなことを言っていた。その木には立派な花が咲ききれいな実が成るのだが、よくその木の育て方について相談を受ける。一年目はきれいに花も咲き、実もなるが2年目に急に元気を落とし、花もあまり咲かなくなる。どうしたら良いか。その人の答えは「実が成ったら片っ端から手でむしり取っ手しまいなさい」である。しかしそういうと大抵の人はきれいな実がなっているのに、なぜ?と聞くらしい。
結局、木がきれいな実を成らすのは鳥に実を食べてもらい、その種を遠くに運ぶためである。園芸の初心者は実がきれいになっているのを惜しんで、鳥に食べられないように網を張ったり、室内に入れてしまうらしいが、本来食べられるためにつけた実が食べられないせいでか、木そのものが弱ってしまうらしい。ストレスのせいか、付けっぱなしの身が木の幹から養分を奪うせいかはわからない。しかし直し方の本質は簡単な事である。知人の園芸の鉄人は「出来れば小鳥にその実を積極的に食べさせるのが一番だ」と言っていた。

物を大切にする事と大事にする事には微妙にずれが有ると思う。相手が物言わぬ植物であれ、やはり相手の立場に立って接する事が一番大切だということか。

しかし聞きながら思った。「ものぐさの私には園芸は難しいだろうな」
知人は言う「サボテンが一番だろう、そういうものぐさな人には」
言葉にさえ気をつければ、万事よく育つのだそうだ。返って難しい気もするのだが。・・場合によっては。