白くて、そして静かな災害

「地元はもう限界」除雪ボランティア呼びかけ

2006年 1月 9日 (月) 00:49

 大雪に見舞われている東北や北陸の自治体やNPO法人などが除雪ボランティアを募っている。豪雪地帯は自力で除雪するのが難しい高齢者の多い地域でもある。「すでに限界で、少しでも人手がほしい」と関係者は呼びかけている。

 屋根の雪下ろしは危険が伴うため、いずれのボランティアも、玄関周りの雪かきや屋根から落ちた雪の片づけなどが作業の中心だ。

 20年ぶりに大雪で災害救助法が適用された新潟県は「雪ほりボランティア スコップ2006」を募集し、年末から十日町市長岡市などに派遣している。県に登録したボランティアに、人手が必要な自治体が出動日などを連絡する。東京や埼玉などからも申し出があり、7日午後4時までに計約350の団体と個人が登録されている。

 海外の紛争・災害の被災地で支援活動に携わるNPO法人「JEN(ジェン)」(東京都新宿区)は、十日町市内の除雪を手伝うボランティアを募っている。一昨年の中越地震を機に始め、今年は初回が1月20〜22日の2泊3日。2月19日までの毎週末を予定している。定員は各回8人。

 福島県会津地方で除雪ボランティアを続けているNPO法人「ハートネットふくしま」(同県郡山市)も2月3日から2泊3日の日程で参加者を受け付けている。

 他の自治体や社会福祉協議会などでも、地元住民向けに除雪ボランティアを募集している。

朝日新聞 asahi.com より引用。

この辺をみていると、被害者の半数以上は高齢者である。80過ぎのお年よりが自宅の屋根や庭先で死亡している事例もある。痛ましい限りである。TV で事故の起こった地域における前回の豪雪時(1980頃か)の様子を映し出していたが、多くの青年、壮年が多分に消防団員なんだろうかが、活発に連携して雪下ろしを行っていた。しかし現在過疎化、高齢化が進み、そうした労働力も過日の物と化したようだ。
以前、防災関係の仕事をしていた頃、防災ボランティアに携わる人々と接する機会があった。阪神大震災での活躍から、一挙にその社会的な存在感を増したと思う。実際、その後のあった幾つかの災害でも色々と活躍はしていたようだ。内閣府が推進する防災施策においても、重要な役割を担っているようだ。以前、内閣府の防災会議にボランティア代表として参加している人から話を聞いたことがある。「これからの防災、災害対策はボランティアの存在無しには成立しない」と自負心をもって語っていた。

今回の豪雪による死亡被害者数は既に一昨年の新潟県中越地震におけるそれを超えているはずだ。しかし官・民の防災ボランティア関係の Web Site を覗いても、全然今回の豪雪関連のボランティア情報が無い。(例えば、こことか*1この辺*2とか、また一般であるがこの辺*3とか)、色々と探してみたが、見つかったのは、Web 上の新聞記事としては引用した物と後一つだけ。ボランティア募集情報はこの辺(東京ボランティア・市民活動センター)ぐらいであった。当然、他にもあると思う。現地の自治体や社会福祉協議会の Web Site を見れば情報は詳しくなるだろう。しかしそうした現場発の情報がハブとなる防災情報ポータルにほとんど上がっていないように思える。何故なんだろうか。当事者もマスコミも、そして一般社会も被害の大きさには関心があるが、それ以上に突っ込んだ関心をあまり抱いていないようだ。なぜだろうか。

  1. 震災や風水害と違い、派手でないからマスコミを通じてアピールしにくいからだろうか。
  2. 被害範囲が広範囲のせいだろうか。とは言え豪雪の被害集中地域は、長野や新潟、秋田、山形というようにある程度は絞れると思うが、どうなのだろうか。
  3. 交通、移動、輸送の問題だろうか。
  4. もしくは今までの災害が、短期間に発災して、後は時間を掛けて復旧・復興に向かうというパターンが多かったからだろうか。
  5. 雪下ろし等の作業に危険が伴うからであろうか。(それは、自宅の大雪を一人でおろさないといけない老人にとっても条件は同じであるが。)

しかし、放っておけば、やはり災害弱者であるお年寄りの方などからさらに被害は広がって行くと予測されている。地方自治体も対策に疲れが見える。政府も自衛隊を出動させ動いているが、独居老人の家屋の雪おろしまでは手は回せないはずだ。

もうすぐ 1月17日、あの日からもう10年以上たつことになる。その後 1995年1月17日以降、大きく盛り上がりを見せた、防災ボランティア活動であるが、ここに来て大きな壁にぶつかっているように思える。何故もっと想像力を駆使して、情報を発信し、社会に呼びかけないのだろうか。気の毒にというレベルで留まって、行動までに至らないというか、多分に無関心なのが、一番の問題のように思える。

「官」から「民」へ、小さな政府という流れは、もはや変えようも無い。過疎化、高齢化が進んだ地域は、それだけ地域のコミュニティの力が崩れてきていると判断しても良いだろう。行政の施策以上に地域の防災力は結局、その地域のコミュニティの充実度だと、防災ボランティアから聞いた事がある。過疎化、高齢化で失われた防災力をどのように補えば良いのだろうか。なぜ誰も考えて、知恵を振り絞ろうしないのだろうか。老人が誰にも気付かれず、庭先で雪に埋もれて死亡してしまうような事態が次々と発生する社会がとても健全だとは思えない。白に近い灰色で、音も無く静かな、そして地味であるが被害者は多い、今回の豪雪による災害が、私達に突きつけた課題は決して小さくははずだが。・・・ただ、難しいとは思う。

*1:内閣府の防災ボランティア情報

*2:民間の危機管理情報ポータルサイト レスキューナウ・ドットネット

*3:Yahoo ボランティア